玉版宣(玉版箋) 紙トップへ みなせトップへ
玉版宣(箋)/玉版加工
★「玉版宣(玉版箋)」 : 「玉版宣」の名があまりにも有名であるため「玉版」加工を施していない画仙紙に修飾用語として「玉版」を用い、「※※玉版」「玉版※※」などの名の画仙紙が数多く流通しています。
本来の「玉版」とは、漉き上げたまま何ら手を加えていない画仙紙(=素紙)に”玉版加工”を施した加工紙(※滲み止めの加工紙ではありません)を指し、この加工を施した紙が本来の「※※玉版(宣)」です。
※注1 玉版加工
昔は「動物の歯(注2)の滑らかな部分」や「天然素材“玉(ギョク)(注3)”の面を滑らかに加工したもの」などを用い、現在ではこれら伝統的な道具に加えてガラスなどの滑らかな面を用いて紙面を、繰り返し擦って磨ってそして磨き上げビロードのような滑らかさとしなやかさを与えると共に磨ることにより紙面を締まった状態に仕上げる。この加工手法が「玉版加工」であり、この加工を施された紙が「玉版宣(箋)」です。
* 注2 歯:中国語の≪牙≫は日本語では≪歯≫を意味します。
中には「牙」=日本語でも「牙」と翻訳する、或いは勘違いし「牙」と説明する向もあり、例えば紙面を摺り整える道具として「猪の牙」がよいと説明されます。
実際に加工の現場(⇒趣味の加工段階を除く)で使用され加工効果のあるのは「猪の歯」です。
日本語で言う「牙」でも「加工」は出来ます。が、加工時の圧力に注意を重ねても紙面は荒れがちになり得ます。
* 注3
玉(ぎょく): 東洋で宝石とされた石でおもに白玉,翡翠 をさすが厳密には硬玉と軟玉の2種がある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典
玉版加工に使用されるのは硬玉です。
玉版宣の大元にあたる画仙紙は
中国安徽省県宣紙の代表格「紅星牌四尺棉料単宣」で、これの二双紙に玉版加工を施したもの、それが本来の「玉版宣(箋)」です。
且つては、丸めた玉版宣(箋)の外包みに「A級四尺二双玉版宣(箋)」と手書きされていましたので「玉版宣(箋)、または二双玉版宣(箋)」と呼ばれました。
現在は模倣品が、更には「前述の玉版加工や玉版加工的な加工を施すのではなくただ単に“玉版”を名前に加えたもの」が多く流通している様子で、それらの一部には旧来の本物と同じ「A級四尺二双玉版宣(箋)」と手書きし如何にも本物に見えるよう装丁されているものもあります。中には「一双(層)紙」にも玉版名を与えている場合も有ります。
これら模造品は安易な手法で「本当の玉版箋(玉版宣)」が持つ「紙面の滑らかさ」を何とか感じさせる紙質を生み出すことに成功しました。
加工に当たって「胡粉、或いはその代用品=酸化チタンなど」を擂り込み一見「玉版宣的な紙面」を作り出したのです。
中にはこの加工さえ省略し、紙漉き時の工程を調整することで紙面を固く仕上げた、に過ぎないものもあります。
本来の玉版宣の素晴らしさを知る作家が少なくなってきた今、これらを本来の玉版宣、或いは玉版宣箋と同等品と思い込まされる作家や、勘違いし理解する作家もあらわれる、という寂しく悲しい現状になっているのです。
紙面を繰り返し擦り続けることで紙繊維の絡みを強固なものにすると同時に紙面を滑らかに、しなやかに整えていく、この熟達の技で素晴らしい撥墨を求める墨アート作家のいずれにも満足を与えた玉版宣。
この技を知らず、安易な手法により感覚的には似たような紙面に仕上げる、
しかしそれは墨を基調とするアートに使用される紙が負う「撥墨」「線質」の佳さ、その紙本来のこれらの目的を完全に無視したものであり、そしてこれらの安易玉版宣風『玉版宣』よりも伝統の工程を守り漉き上げた、そして何ら手を加えない「宣紙」そのもののほうが撥墨・線質共に優れているというとんでもない「玉版宣」を生み出しているのです。

 中国政府が強力に推し進めた社会主義市場経済なる実験的経済体制の進行に連れ、それまでは「安徽省宣紙の代表格“紅星牌宣紙”」の流通権利を一手に握っていた(中国工芸品進出口総公司傘下の)上海工芸品分公司(=当時の体制名)。その後「上海工芸」、そして今は「上海東工芸品股公司」=が独自に玉版加工を施していたので、その原紙である安徽省県宣紙をつくる旧安徽省工芸品公司の関係者達はこの玉版加工技術はおろか玉版宣という製品も知りませんでした。
1980年頃の中国経済改革を機に安徽省は経済的に上海工芸から独立、安徽工芸として自ら「宣紙」を流通させる権利を手に入れ、上海工芸は一時期その全権利を奪われました。
これにより両者の技術を重ねる事で製造されていた「玉版宣」自体が全く忘れられた存在になってしまいました。

どうしても玉版宣を手に入れたいとの顧客要望により1985年頃の上海工芸責任者に頼み込み古い玉版宣在庫品を探し出してもらって輸入したのが玉版宣再製造の切っ掛けになりました。

以降、安徽省工芸品公司の玉版宣(箋)復活に続き、今では紅星牌宣紙廠がこれを復活させています。

これとは別途、多くの輸入業者が、或いは国内販路が、画仙紙として特に高名な「商品名/商品等級を知らしめる言葉“玉版宣(箋)”」の使用に制限(モラル)が無くなったかのような勢いで様々な「玉版宣」「玉版箋」を販路にのせ、流通させています。
以上簡単ですが・・・・山口j一(山口そう一)
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