毛筆類似筆「水筆」と製筆工程に大改革をもたらした「水筆工程」
 
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江戸中期ころ、新たに考案された「水筆」工程       毛筆類似筆「水筆」
これまでの製筆法を簡易化した「水筆工程」は、それまでの製筆法、巻芯筆(紙巻き筆)製法を瞬く間に席巻しました。
(当時の)新たな製筆法、現在も続く「水筆」工程による筆頭の作り方、現在も筆の主流をなす工程をご案内します。

原毛炊き :
筆原毛の「脂抜き」と毛の「くせ直し」のため、毛を炊き脂分と汚れを取ります。
最近⇒1980年ころからは「原毛」入手の段階でこの工程は既に為されている例が多くなっています。

以下は、伝統の書画筆「有馬筆」の筆造り工程、筆の作り方の概容です。

(毛炊きにより毛の脂を抜き癖を直した原毛の)選毛 :
筆の性質、品質に応じ原毛を3〜5段階に、筆のレベルにより3〜6段階程度に毛を選別します。

綿(毛)抜き :
選毛した毛の綿毛を完全に取り去り保護毛(刺毛)だけを残す。この作業は毛揉みの時にも行います。

“火のし”かけ :
毛の本質に影響しない温度下の熱で毛のくせを直すと同時に内部の脂を浮き出させる。

毛揉み :
「火のしかけ」により毛の脂が浮き、取り去りやすくなった毛に「灰」をまぶし、揉み、脂を抜きます。
先寄せ:
毛先を揃える工程です。毛先を揃えながら「逆毛」「切り毛」「状態の悪い毛」など余分な毛を浚えます。
毛先がシッカリと揃えられた=先寄せ作業がなされた=毛を少量の「ふのり」を溶かした水に浸した後乾燥させ保管します。これは折角先を揃えた毛先がずれるのを避けるためです。

寸切り:
「先寄せ工程」で毛先を揃えた原毛の丈を切り分け、造る筆に応じた割合で長さの違う毛を作る。

「先寄せ工程」で適量ずつ「布海苔仮り固め」をして保管した毛をぬるま湯に浸した後、目的の筆に応じた長さに毛を切り分け、数種の長さの違う毛を作ります。

かっこう付け :
筆作りで最も重要な工程で「筆のかたち」「筆の品質」「筆の性質」が「 かっこう付け 」で決まります。
「原毛の種類、品質、性質」「毛組をする原毛各サイズの長さ、及び各サイズの毛質、毛量」・・・、など筆の基本=性質を決める筆つくりの中で最も重要な工程です。地味な基礎作業で、実際に体を使う工程とは違い、筆を考え、適切な毛組を考え、最適な毛の組み合わせを決める工程です。
作業難度は高くても単純作業の繰り返しの連続である筆つくりの多くの工程とは異なり「かっこう付け」&「選毛」は単純作業では適わない高度な経験と感性が必要です。

  余談:筆頭の切っ先を形成する一番長い部分に揃う毛全般を「命毛」と呼ぶことが多い。
      有馬筆の筆司の間では、これを“先毛”と呼びます。

練り混ぜ:
かっこう付けを終えた毛各部の長さの毛が全体にまんべんなく混じり合うようにねりまぜる。
作業性自体は前項の「かっこう付」により適切に配分された原毛をまんべんなく混ぜ合わせるだけの、単調な作業の多い筆工程の中でも代表的に単調な、しかし重要な工程です。
芯立て:
ねりまぜを終えた毛のしりを少量の「ふのり」に浸し、造ろうとする筆の太さに分け、筆の芯毛をつくる。


以上の「原毛処理の基本」に相当する工程までは「巻芯筆」と「水筆」の工程はホボ同一です。
以下の「上毛着せ」から工程差がはじまります。 .


『水筆工程』
上毛着せ:
「芯毛」の上に筆頭の外側に巻く化粧毛(上毛)を巻きつけます。
≪筆頭の色≫は 『上毛』⇒筆頭の外側に薄く巻く化粧毛の色なので筆の本質と直接的な関連はありません。

『巻芯筆(紙巻き筆)』:
芯立て U:
新立を終えた筆頭の数カ所に糸を巻き「芯立てをした筆頭の芯毛」を固定します。
上毛着せ:
糸により固定された芯毛に、更に紙を巻き芯毛の固定を強くします。この後、巻いた紙の上に上毛を掛けます。


乾  燥 :   上毛を被せた穂首を十分に乾かす。

緒縮め(おじめ)= 尾締め(おじめ): 
『水筆工程』 
 穂首の「尻」を麻糸で巻き同時に焼きゴテで焼き、芯毛を熱で締まりやすくした上で強く締め、筆毛の固定をより強化する(産地により「焼締め やきじめ」 )。
『巻芯筆(紙巻き筆)』 
 穂首の尻寄りの、紙で巻かれた端部分を糸で締める。水筆工程の尾締めとは異なり熱は加えない。


くり込み:
出来上がった穂首を竹軸につける。筆頭の太さに適応する筆軸を用意します。筆軸のほとんどは天然竹、筆頭は手造り。前もって内寸を合わせた軸を使用しても穂首そのものの太さが微妙に異なります。軸に筆頭がうまく収まるように筆軸の内径を広げます。繰り込みの後、筆頭と軸を接着剤で固着させる。

仕上げ :
“ふのり”を、充分にしみ込ませた筆頭に糸を巻きつけ余分なふのりを取ると同時に形をととのえる。

穂 首 の 乾 燥 :
仕上げを終えた筆を乾かして穂首を固める。乾燥後「キャップ(=サヤ)」を着け筆頭を保護します。 

銘入れ
筆の軸に銘を彫り込んだり、レッテルや定価を貼ってできあがる。


『水筆』
  芯立て以降の工程効率化が図られ、筆頭の糸掛け=尾締めは、筆尻に熱を与えると同時に強く締める「尾締   め」工程一回。また、筆頭は、筆頭が軸と接している部分まで、使用者の好みに応じ捌くことが出来る。 
『巻芯筆(紙巻き筆)』  
  筆頭の複数箇所に糸を巻き固定し、更にその上に紙を巻き筆芯毛の固定を計る。
  筆頭のかなり先に近い部分まで紙を巻く。筆先から紙を巻いている部分までは下ろす=捌くことが出来る。


筆工程の余談です。
 ★ 筆の号数? 『筆の大きさ=号数 』???
※号、※号などの筆の「号数」=筆頭の寸法規格であるかのような伝え方をされている。或いはそう信じられている。
「◎号筆」と同じ号数なのに「筆の大きさ」が違う。これは多くの方が経験されたことと存じます。にもかかわらず「筆 ※ 号」は「筆頭の大きさの基準」であるという情報がまかり通っています。
この「号数」が「筆頭の大きさ基準」であると言う情報は不確定な情報の一人歩きで、本来の筆の大きさ(寸法)表示の基本には「号」はないのです。
本来の「筆の号数」は、@「同一性質・品質」の「A筆」の大きさを何種類か作り、大きさ毎に「筆の名前を変える」と言う方法ではなく、同一筆名のもと、「号数」により筆の大きさを区分けをします。A「品質が違う」筆の「品質差」を表すため、同一筆名の下に「1号」「2号」「3号」」・・を加え区分けします。
この@Aが「筆号数」の本来意味するところなのです。
※※と言う筆屋さんの※※と言う名前の筆シリーズ。その筆の ※号との表現なら、その筆シリーズを知っている人にはその筆の寸法が判りますがそのシリーズを知らない人には判りません。
筆の製造に当たって、私も含め筆職人は筆頭の大きさをその実寸「※寸※分※厘」で表現します。
決して「※号筆を作っている」などととは言いません。
筆の大きさの基準のように捉えられている「※号筆」、一昔前、ある筆司が訪れた顧客に自身の製造する筆シリーズのひとつ、大きさが6種類の筆シリーズの筆頭寸法を説明するに当たって「※寸※分※厘」の連続では細に渡りすぎて説明がしづらい。また顧客のスムーズな理解を得るのに多くの説明を要する。
と、大小区別のスムースな説明ためその6種類の規格を1〜6号と表現し説明しました。
その顧客は筆司が咄嗟に筆の大きさ説明に利用した「1〜6号」との説明を「筆寸法の基準」と勘違いし、
この「1〜6号」がそのまま全ての筆規格に当てはまるものとの誤った理解のまま自身の出版物に掲載しました。
筆の資料を探していた人たちに採用しやすい説明であったことから、後に続く筆関連出版物の「筆の大きさ規格」の参考資料として次々と利用され次々と同じ内容で出版されました。
これが転載を繰り返され、どの専門書・説明書を見ても出所はひとつの同一数字が並ぶことになり、一人歩きし筆の大きさ基準の如く捉えられるようになったのです。
実際の筆で※号筆と表示されているものを比べるとき、同一製筆者の同一号の筆でも筆のシリーズ(名)が違えば、同じ一号筆であっても「寸法は違う」ことに気づかれるはずです。
これららに客観的な判断を下されるには、上海工芸など伝統がある筆関連会社の有名な筆シリーズ、それぞれのシリーズの同一号筆の大きさのを比較すればすぐ納得できます。


毛筆類似筆「水筆」
平成29年3月に公示された新学習指導要領により、小学校低学年での使用急増が期待される「水書半紙」
その「水書半紙」に、墨(水)きれの心配なく書き続けられる、筆軸部分に「水」を蓄える、いわば簡易万年筆の機能を持つ筆が「水筆」と呼ばれ出しました。本来の筆に水をつけ水書半紙に字を書く。
これなら「墨切れ」などの現実の筆の使用感も経験出来ます。
が、俄に水筆と呼ばれることになった「軸部分に水を内包する」水筆の使用では、「筆」は何時書いても同じ水量の、筆記具、と言う、小学校低学年製の理解になりそうです。
更に、水書紙は、如何に上手に書いた字も、ごく僅かの後には消え去ります。
逆から見れば、如何に乱暴に、或いはいい加減に書いた字でもすぐ消えて、書いた時の不真面目さは誰にも判りません。字を書くことの意味が、少しでも理解できる年齢に育った時点で、はじめて「水書紙」を使用するのが、よりシッカリとした字を覚えることにつながるもの、と考えます。
 
本来、「水筆」とは、
筆工程のひとつを意味し、「水筆工程」と呼ばれる、現在の筆つくりの主流に繋がる、筆の歴史としては比較的最近、江戸時多代からはじまった筆の新らしい工程を指します。   ☆ 水筆工程へ





















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