筆 の 原 毛 に つ い て  狸 & 狢(ムジナ) みなせトップへ 筆トップヘ
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貂(てん) 猪 ( 豚 ?) 化学繊維/ポリアミド繊維(ナイロン) 筆の実  兼毫??  


 狸(たぬき)  &  狢(むじな)
狸は大きく分けて、高級筆の原毛としての「日本狸」、少し毛先が粗い「中国狸」があります。

通常、「中国狸」と称する原毛は毛質の粗いものがほとんどなのですが、その中で、日本狸に相当する品質の「水かん(かん=「」のサンズ偏の代わりにケモノ偏)」と言う原毛があります。毛丈は日本狸同様長いものがないので、主として高級小筆に使用されています。この原毛は、中国で日本筆の毛組・特性など製法の指導を本格的に始め、中国筆職人との交流が深まってきた1985年頃知りました。動物学で何に属するものかは知りません。
日本狸と同様弾力が強く毛先は滑らかでスムーズに回転します。高級小筆に使用できる質です。

日本狸は小動物ですので小筆として製造されることが主になります。           
日本狸です。毛先の黒いものがほとんどです。先輩達が「オダヌキ」と発音していましたので私もそう言っています。オダヌキの「オ」が「尾」なのか「雄」なのか、別の意味なのか知りません。右が白狸と言われるもので「うす茶色」、入荷量全体の5%ほどしか有りません。 ご覧のパソコンの色設定により原色が正確に再現されているか判りませんが、普通の狸は真っ黒です。白狸とは「白」でなく「薄茶」を言います。長年狸筆を手掛けていますが「真っ白」な狸毛は見たことがありません。何れも毛先の色で表現します。
狸毛の筆と称するものの中には半紙に漢字4字書くようなものや、中には画仙紙半切に一行書き出来るくらい大きなものもあります。これらは「狸」ではなく「狢=むじな」の毛を使用しているのですが、昔から日本でも中国でも狢と狸の違いは何かと問題になったりします。
以下は私なりに調べた「タヌキ(狸) 」と「ムジナ(貉)」の違いです。
狸毛と狢毛
タヌキ(狸)      
分類 食肉目 イヌ科Nyctereutes procyonoides 英名 Racoon Dog(犬に似たアライグマ)
分布 日本、中国、アムール地方、朝鮮、沿海州方面に分布
体重5〜8kg、体長50〜70cm。冬は厚い毛に覆われている。顔は丸く目の下に黒い斑紋がある。長胴短脚、背中の毛は黄褐色で黒いさし毛がある。尾はフサフサ、四肢の先は黒い。
夜行性で雑食、集団行動し、水辺近くの山林に住み、人里近くにも出没する。岩のすき間や木の洞を巣とする。
1ケ所の決まったところに排泄し、フン塚(タメフン)をつくる。一時的に失神状態(タヌキ寝入り)をする。木のぼりが上手。

アナグマ(貉:ムジナ)
分類 食肉目 イタチ科Meles meles      英名 Old World Badger
分布 ヨーロッパ、アジア温帯地方、日本
体重4〜12kg、体長50〜80cm。体つきはがんじょうでずんぐり。目・耳が小さくへん平な顔。鼻が円盤状でブタの鼻に似ている。爪が長く大きい、やや内またで歩く。体毛は暗い赤褐色。口先から眼・耳へつながる白い縁どりの暗い線がある。
夜行性、雑食、ハチノコは大好物。単独行動、穴掘りが上手。地下に大きな穴を掘り、リビングルーム、育児室、寝室、通気孔、出口、入口を備えた豪華な巣穴。数世代が同居する。
 中国では古くからタヌキのことを貉と表記しており、現在でもタヌキの動物学的標準名は「貉」となっています(以上、埼玉県立自然史博物館自然史便り第20号)。

★毛筆に使用される「狢」の毛は、私(山口そう一)が知る限り中国産です。
 「狢」は上記の資料通り「イタチ科」とのことですが、筆の原毛として見るとき鼬(いたち)毛の特徴は一切見られません。狸毛の中でも粗い狸毛の特性そのものです。毛の太さは勿論、毛先も日本狸よりズーッと粗いのです。
 と言うことで、筆で言う「狢」は狸に似た毛質で粗いものと言うことに落ち着きます。
この毛質の差に関しましては、日本産の狸毛に限定しても、狸の生息地により毛の性質が大きく異なります。
生息地が僅か10Kmも離れると、筆の原毛として判断する時、毛の性質に大きな差が有るのです。その差はこの距離が原因ではなく、その間の地形などにより狸が一つの集団として生息する範囲が限定される、つまり集団毎に顕れる微妙な毛質の差でも、毛筆の原毛としては、それも高級小筆の原毛としては書き味に大きく影響を与え、質が全く違うと言いきれる程の差が生じるのです。 
 筆に関しては、中国産狸であるとも言える「狢」の毛と、日本で言う「狸」の毛の間には大きな差(毛の太さ、一本の毛毎の毛の根本から毛先にかけての太さの変化、毛先の滑らかさなど)があることが納得できます。  
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